油絵の具には5種類の白がある
油絵の具の白の使い方が分からなかった
実は、
お恥ずかしい話ですが、大学時代は絵の具の「白色」の使い方が分かりませんでした。
絵の具を画材店に買いに行って、白が置いてあるコーナーには、何種類かの白があったのですが、
なんとな~くの気分で白を買っていたんです。
美術の大学だから、白の種類や使い方を教えてくれるんじゃないの?
そんな風に思うかもしれませんが、
先生が講評をしてくれる時は
描いた「絵」についてのテーマだったり、構図だったりで、画材の使い方のノウハウについては教えてもらえなかったのですね。
今、考えてみると
画材の使い方のノウハウは、身に付けていることが当たり前の前提で話をされていたってことなのだと思いました。
なので、
油絵の具の「白」の種類と使い方について分かったのは、大学時代から今までの間に実際にいろいろな種類の「白」を使ってみて
そして、技法書などからの知識をもとに
試行錯誤しながら「白」絵具の種類と特性について身に着けていったという感じなんです。
今はインターネットで検索すると
油絵の描き方のブログなんかで、絵具の種類や使い方のノウハウが紹介されているので
そういった情報をもとに勉強する方法もありますよね。
そんなわけで
このブログを読んでくださっているあなたに、分かりやすく油絵の具の「白」について説明をしていきたいと思います。
白絵具の種類と特性について
チタニウムホワイト
油絵の具の白には5種類あります。
①チタニウムホワイト
②パーマネントホワイト
③シルバーホワイト
④ジンクホワイト
⑤セラミックホワイト
です。
油絵を始めたばかりのころは、この中のどれか1種類を使って描いているのではないでしょうか。
絵の具のセットに入っている白は、パーマネントホワイトが入っているかと思います。
さて、チタニウムホワイトですが、
このチタニウムホワイトは、5つの白の中で一番隠ぺい力(下の色を覆い隠してしまう強さのこと)が強い絵具なんです。
私はチタニウムホワイトは、下に塗った色を覆い隠してもいい場所に使っています。
例えば、雪山の雪の部分や、百合の花びらの花びらの厚みを出すために最初の色の層を塗るときに使っています。
油絵は、下書きから、乾いては塗って、また、乾いては塗ってと何層か塗って仕上げていきますが、チタニウムホワイトは、最初の描き始めに使います。
最後の層に使うと、今まで何層か塗って、混色では出せない感じの色ができてきたな~、という所で使うと、下の色を、覆い隠してしまうので、何層か塗ってできた、微妙な色合いが、すべて消えてしまいます。
しかし、今言ったようなことは、写実的な絵を描いていてデリケートな色味を表現したい時には当てはまりますが、
例えば
抽象画を描く時などは、
わざと、チタニウムホワイトの隠ぺい力の強い、チタニウムホワイトを最後に使うのも、面白いと思います。
それぞれの「白」には特徴があるので、
その、特徴を知って自分が表現したいイメージに合わせて使い分けるという感じでしょうか。
パーマネントホワイト
絵の具のセットの中にはこの白が入っていることが多いと思います。
適度な隠ぺい力で、どんな色と混色をしても、ちょうどよい色加減の色が作れる「白」だと思います。
私は基本的に「パーマネントホワイト」を使用しています。
基本的に、と言ったのは
パーマネントホワイトを中心に使って、その時、その時でチタニウムホワイトを使ったり、シルバーホワイトを使ったりしているからなのです。
写実的な絵画を描いていると、近くのものと遠くにあるものを描き分けるときに、
近くのものは鮮やかな色合いで輪郭もはっきりと描きます。
遠くにあるものは青みがかったグレー調子の色に近づきます、そして輪郭はぼんやりとしたものになります。
この、遠くにあるものを描く時にパーマネントホワイトを使います。
青みがかった、グレーの色を作るときに、モチーフ(山だとします)の固有の色に青や補色(反対の色)を混ぜるだけでは、暗く、にごった感じにはなりますが、グレーがかった色味にはなりません。
そこで、白を少し混ぜます、パーマネントホワイトを混ぜるとちょうどよい透けた感じのグレー調子の色ができるのです。
それから、輪郭もこのパーマネントホワイトで作った、グレー味の固有色で上から輪郭に沿って塗ると、ちょうどいい感じに輪郭をぼかすことができます。
シルバーホワイト
シルバーホワイトはパーマネントと同じくらいの隠ぺい力で、どんな色と混色をしてもちょうどよい色味のパステルカラーを作ることができます。
ただ、赤色の「マダーレーキ」と「クリムソンレーキ」を下地に塗ると、作品が完成してから時間の経過とともに、下に塗った赤の色が白色の表面に出てきてしまいます。
ブリード現象
といって、レーキと名前がついた絵具は、透明な顔料に染料で染めてあるので、時間の経過とともに、上層部分に染料が染み出してきてしまいます。
それからもう一つ
シルバーホワイトには、
混色の制限
があるんです。
シルバーホワイトは鉛白を使って作られていますが、鉛白は硫黄の成分と混ぜると黒くなってしまうのです。
この、硫黄を含んでいる絵具は「ウルトラマリン」や「バーミリオン」です。
現在は、混ぜても問題ありませんと言われているそうですが、メーカーによっての見解は分かれているそうなので
気になるのであれば、シルバーホワイトと、「ウルトラマリン」「バーミリオン」の硫黄が入っている絵具とは混色をして使わないほうが無難だと思います。
シルバーホワイトは、使い方がなかなか難しいと感じているので、そんなこともあり、私は本当に乾燥を早めたい時にしか使わないのです。
使うときも
上記のように、混色に気をつけて使っています。
趣味や練習で描いていく分には、気にしなくていいと思います。
でも、絵を販売しようと考えていたら、購入してくださった後に、絵が黒ずんでしまったり、白い色で塗った部分から、赤がにじんで浮かび上がってきてしまった。
なんてことが起こったら、大変なので
シルバーホワイトを使う時は要注意です。
それから、
シルバーホワイトは鉛石鹸化をするので、強固で堅牢(強くて丈夫)な画面をつくることができます。
なので、下地を塗る時に適した白い油絵の具です。
あと、もう一つの特性は、早く乾きます。
鉛が入っていることにより早く乾くのですが、その鉛は毒性が強く、シルバーホワイトで地塗りをして、乾燥後に紙やすりで表面を研磨なんてしないほうがよさそうです。
もし、表面を平らにする必要があるなら、防塵マスクと手袋をして作業してください。
それと、傷口にシルバーホワイトを付けてしまわないように気を付けてください。
画家によっては、このシルバーホワイトをメインに使っている方もいるようです。
また、シルバーホワイトは他の絵具より水あめのように、糸を引く感じの絵具ということも覚えておいてくださいね。
でも、乾燥時間が短縮できるので、早く仕上げたい作品の時にはパーマネントホワイトの代わりに使ったりもしています。
乾燥の遅い色を使うとき、例えば黒を混ぜる場合などは、シルバーホワイトを少し混ぜてあげると、乾燥が早くなります。
また、逆に「コバルト」と名前がついた色「コバルトグリーン」それから、「プルシャンブル―」の絵具は乾燥がとても早くて、
すぐに蓋が開かなくなって、こんな状態になるのですが
乾燥時間が早い色に混ぜることによって、他の色との乾燥時間を合わせることができます。
絵の具のチューブの蓋が固まってしまって開かなくなった時は、無理にひねると、上の写真のようになってしまいますので、
チューブの蓋の部分をお湯につけて、ペンチで蓋をすこしはさむようにほぐして開けるようにしてください。
ほんとうに、すぐに固まるので、10㎖のチューブ(いちばん小さいチューブサイズ)を購入するようにしています。
ジンクホワイト
ジンクホワイトは上書きに適した白で、ほかの白と比べてみると透明度が高いです。
繊細なパステルカラーの色のグラデーションを作りたいときに適した白です。
亜鉛華が含まれているので、下の層で使用するともろくなり、将来剥落の危険があるので、最後の仕上げの上層部分に使うといい絵具です。
亜鉛華は、酸素と結合して油が固まる時に金属石鹸を作ってしまい、その影響で絵具の固着力を弱めてしまうようです。
なので、この白はほとんど使うことはありません。
ジンクホワイトは、単独の「白」として販売されている以外にも、
あらかじめ、何種類かの色を混色してチューブにつめて販売されているものもあるので、ジンクホワイトを使わないつもりでいても、他の色の中に混ざっていることもあります。
たとえば、「ジョンブリアン」のような肌色の絵具に白としてジンクホワイトが使われている可能性があります。
絵の具のチューブには、記号がかいてあり、その表示を見ると、どんな顔料をつかって、その色が作られているかがわかるので、
中間色(パステル調の色味)を購入するときは、ラベル表示を見てみましょう。
画材メーカーが出しているパンフレットをみるのも、どんな顔料を使っているか分かるのでおすすめです。
セラミックホワイト
最後にセラミックホワイトです。
このセラミックホワイトは最近メーカーが作ったものなのかな?
昔は画材店では見かけることがありませんでいた。
調べてみたら、1990年に画材メーカーのホルベインが開発した「白」だぞうです。
画材店でも見かけることがなくて、まだ買って使ったことがないのですが、青みがかった白だそうです。
今度購入してどんな色なのか使ってみようと思っています。
まとめ
油絵の具ってほんとうにたくさんの「白」色があります。
白は、それぞれの特徴を理解して、自分の表現に合わせて使うという感じでしょうか。
油絵を学び始めたばかりの頃は、形をとることだったり、絵具の扱いに慣れる事だったりで「白」を使い分けるところまでは気持ちにゆとりがないかもしれません。
だけど
だんだん慣れてくると、油絵の具の色によっていろいろな透明感があることが分かってくると思います。
その、透明度を「白」で調節して使いこなせるようにチャレンジしてみてくださいね。
私もまだまだ、勉強途中です。
一緒に、絵を楽しんでいきましょう。そして、油絵の具の魅力を少しでもお伝えできるよう私もがんばりますね。
読んでいただきましてありがとうございます。