油絵にもいろんな技法があるんです
こんにちは。
油絵を習い始めて4年~5年くらいたつと、もう少し表現の幅を広げたい。いろいろな技法を使ってみたい。
そんな風に思うかもしれません。
油絵の一般的なイメージは、ゴッホの絵に代表されるような、キャンバスに絵具を盛り付けるように塗る描き方ではないかと思います。
こんな感じの絵ですね。
こんな感じの、絵具を盛り付けるような描き方は、16世紀の「ヴェネツィア派」と呼ばれるイタリアルネサンスの画家である「ティツィアーノ」が最初に生み出したといわれています。
その描き方は、17世紀の画家「レンブラント」に引き継がれています。
そうして、
19世紀にチューブ入りの絵具が開発されたことにより、「油絵の具は適度な硬さがあり、豚毛といわれる硬い穂先の筆ですくい取って、キャンバスの画面に盛り付けるように塗ることが出来るようになったんです。
油絵の具は、最初に作られた時は顔料を油で練って作ったものなので、さらさらとした水のような状態のえのぐだったのです。
今、現在使われている金属製のチューブに絵具を充填するためにも、適度な硬さが必要だったということもあるのですが、
この、硬めの練り調子の絵具が作られることによって、絵具を盛り付けるように塗って、筆跡を残してタッチをつけたり、絵具を削り取ったりといった表現ができるようになりました。
古典絵画技法とは
油絵の具を最初に考案したのは、15世紀のフランドル地方(今のオランダ)の画家の兄弟、ヤン・ファン・エイク兄弟だと言われています。
この作品はヤン・ファン・エイクの作品で、
ヤン・ファン・エイクは、兄のフーベルト・ファン・エイクと一緒に「ヘントの祭壇画」も制作しています。
ヘントの祭壇画とは、
ベルギーのヘントにある、シント・バーグ大聖堂が所蔵している祭壇画のことです。
油絵には500年もの歴史がありますが、この油絵の技法が日本に紹介されてからの歴史は100年くらいなんです。
最初に日本に油絵を紹介したのは、黒田清輝という画家でした。黒田はヨーロッパに留学をして、油彩画を学んできたのですが、当時のヨーロッパでは印象派の絵画が主流であったため、印象派の描き方を日本に紹介することになり、
油絵といえば、ルノアールやモネといった印象派の絵画をイメージするのだと思います。
近年になってから、
日本でも様々な油絵の技法の紹介がされるようになりました。
私は個人的に、15世紀フランドル(現在のオランダ)絵画が好きなこともあり、この古典絵画技法を利用して、絵を描いています。
フランドル絵画の特徴は、
繊細で緻密な線と色彩が鮮やかでそれでいて油絵の具の深みがある色合いです。
その表現をつくるために、「グレーズ技法」を使います。
「グレーズ技法」とは、透明な絵具の層を何層も重ねて塗っていく方法のことをいいます。
古典絵画の技法で描く油絵・グリザイユとは
古典絵画の技法について、私の油絵の制作過程を紹介していきながら、どんな風に描いていくのかを説明していきます。
まず、はじめにパネルに地塗りをします。
に詳しく地塗りについて紹介してありますが、古典絵画技法で使用する支持体(絵を描く土台になるもの)は板になります。
板は、ラワンのものとシナのものがありますが、シナのパネルを使ってください。
ラワンは、時間の経過とともに、茶色いヤニ(木の樹液)がでてきます。
そこに、ジェッソもしくは、μグランドの地塗りをしたものに、鉛筆で下絵を描きます
4号サイズの大きさのパネルに、μグランドを6回ほど地塗りをして、乾いたらあらかじめ描いた絵をトレーシングペーパーを使って転写して写します。
そうしたら、鉛筆の線がこすられて消えないように、フィキサチーフ(定着スプレー)をかけておきます。
グリザイユ・カマイユ(有色下地に白で描く)
つぎに、
地塗りは、かなり油を吸収するので、あらかじめ油をぬって、吸収力を調節するためと、インプリマトゥーラ(有色の下地塗りのこと)をして中間の明るさの色を画面の全体に塗ります。
今回は「バーントシェンナ」を塗りました。
こんなかんじですね。
画面の絵の背景の部分に「バーントシェンナ」の色が塗られているのが分かりますね。
そのあとに、アキーラ絵具のチタニウムホワイトで、明るい部分を「ハッチング」といって、細い線でモチーフ(モデル)の形に沿って、線を何本も重ねて描いていきます。
アキーラ絵具の白には、CPホワイトという白とチタニウムホワイトの2種類があります。CPホワイトは透明な白なので、線がはっきりと出ないので、必ずチタニウムホワイトの方を使用してくださいね。
この絵のように、有色の下地の上に白の絵具で明るい部分をデッサンをするように描き起こしていくことを「グリザイユ」といいます。
「グリザイユ」は灰色の下地の色の時を指して言います。
茶色の下地の場合は「カマイユ」といいます。
灰色でも、茶色の下地の色でもどちらでも構いませんが、下地の色によって、出来上がる絵の印象はすこし、違ってきます。
絵が変わってしまったのは、この百合の花の絵を描く時に。鉛筆の線で描いた画像を撮影していなかったので、他の作品を例をして使いました。
こんな風に、白で明るい部分をデッサンするように描いていきます。
古典絵画技法で使用する道具
実際に私が使用している道具で説明をしていきます。
油を入れる容器はジャムなどの蓋を利用しています。
このほうが、最後油をふき取って始末するのに便利なんです。
油絵を描き始めたころは、市販されている油壷を使っていましたが、使い終わって、油をふき取る時にきれいにふき取れるので、これを使っています。
油を容器に入れる時には、ストローを使っています。
ストローを、油が入っている瓶にいれて、ストローの頭の部分のあなをふさいで持ち上げると、適量の油がとれて、簡単に皿に移すことができます。
筆は、水彩用の筆を使用しています。
硬い豚毛の筆は、絵具を塗ったあとに、筆跡を消すために、叩くように使うだけでほとんど使いません。
筆が転がらないようにと、机に直に置くと絵具が付くので、自分で粘土で筆置きをつくりました。
これは、ホームセンターで販売されている、汚れをふきとるためのパルプでできたウエスです。
筆やパレットの絵具をふき取るために使います。いろいろ試してみましたが、これが一番使いやすと思います。
絵の具のチューブの蓋が固まって開かなくなった時に便利なペンチ
それから
油絵の具はなかなか乾かないので、画面に直に手を乗せて描くことができません。
そこで
自分で作った腕鎮(腕を乗せる棒のことをいいます)を使って描いています。
こんなふうにして描いています。
パネルの上の部分に棒を貼り付けて自分で作りました。この、でっぱりに腕鎮(これも自分で手作り)をひっかけて、腕鎮の棒の部分に手を乗せて描きます。
グリザイユができたら、モチーフ固有の色を塗っていきます。
制作過程
最初から、強い色は使わないで、少しづつ、色を濃くしていきます。
また、アキーラ絵具で背景にも縦の線を描いていって、密度を出すようにしています。
線や点はアキーラ絵具で描いて、絵具で固有の色を塗っていくという感じで進めていきます。
細い線は、アキーラ絵具で描いています。縦の線を平行に何本も引いたり斜めの線をクロスして描いたり、点をたくさん描いたりといった方法で密度を作っています。
そうしないと、奥行きや、重さが表現できないのです。
ただ、透明な絵具を何層も重ねて塗っただけでは、物の存在感が出ません。
アキーラ絵具で描いては、油絵の具で影の色を薄く平面的に塗っていきます。
それを、交互に繰り返すことで、深み・奥行き・物質の感じができてきます。
完成作品
画像では分かりにくいのですが、背景の真ん中より下の部分はアキーラ絵具の「金色」で塗ってあります。
見る角度によって、色が変わって見えます。
まとめ
油絵の技法は他にもいろいろなものがあります。
この技法が生み出された背景には、絵具の性質上の問題が大きく関係しています。
16世紀に、イタリアルネサンスの画家「ティツィアーノ」が絵具に硬さを加えて量感や厚塗りといったことを可能にしてから、
ゴッホの絵のような描き方や、絵具をパレットナイフで乗せたり、削り取ったりといった技法が使えるようになりました。
古典絵画技法はそうした、硬めの練り絵具が使用される前のさらさらな状態の絵具を使って描く描き方のことを指します。
それはそれで、繊細で色鮮やかな絵に仕上げることができる技法でもあります。
絵を描いていて、マンネリになってきているな、もっといろんな技法を学んで自分に合った表現方法を探りたい、そんな人は古典絵画の技法を学んで、絵を描くときに利用してみてくださいね。
たくさんの技法を知ることは表現の幅を広げることだと思うので、古典絵画技法に興味を持って挑戦してもらえたらうれしいです。
また、技法を知ることは、絵を鑑賞するときの参考にもなるんじゃないかと思います。
技法を変えたら、絵がうまくなった。絵を描くのが楽しくなったという人は結構います。
それから、この技法は細切れ時間で絵を制作する主婦にぴったりの技法だと思います。計画的に色を塗っていくので、今日はこれくらい時間がとれるので、ここの部分だけ色を塗ろう、そういった作業ができるのです。
よかったらこの記事を参考に制作してみてください。
すこしの時間でも、長く絵を描き続けていくことが上達の秘訣です、一緒にがんばりましょう。