こんにちは、駒形です。
油絵を習っている方でパステルという画材を使ったことは
ありますか?
実は
油絵と「パステル」という画材はワンセット
のような形で使うことが多いのです。
それはどうゆう事か?と言いますと・・・。
油絵でキャンバスの上に絵の具を乗せる前に
必ず「下書き」というものをしますよね。
そのときの、下書きのことを
「エスキース」と呼びますが、
その、エスキースづくりのときに使うのが「コンテ」や「パステル」と
いった画材なんです。
また、「パステル」
は、油絵の基本技法の練習のためにも使われるんですね。
「トロワデッサン」とか
「3色デッサン」という言葉を聞いたことがありますか?
そういった技法で描くときに
「パステル」を使用して描きます。
では、「パステル」がどのように使われていったのか
巨匠たちの作品を見ながら解説をしていきたいと思います。
パステルで絵を描いた画家たち
私の独断と偏見で、パステルで有名な画家たちをご紹介したいと思います!
まずは・・・
※エドガー・ドガ
ドガはフランスの印象派・写実主義の画家として知られています。
ドガはバレエを主題とした作品を多く残していて、実際にドガの作品の半分以上は
バレエの絵なんだそうです。
ほとんどの作品はパステルで描かれています。
※オディロン・ルドン
ルドンは19世紀~20世紀の初めにかけて活動した画家です。
フランス人で、無意識下の世界を描写したような
夢と幻想の世界をパステルで描きました。
※メアリー・カサット
メアリー・カサットは女性の画家です。
アメリカ人なのですが、生涯のほとんどをフランスで過ごしました。
母子の絆を描いた印象派の画家でパステルでの作品を残しています。
カサットの絵はパステルで描いた作品の画像を貼り付けることができなかったので、
油絵を乗せました~。
カサットもパステルで作品を描いています。
メアリー・カサットパステル画で検索するとたくさんの素敵な画像が出てきますよ!
それから
※ピエール・オーギュスト・ルノワール
ルノワールは有名ですよね、日本人が好きな画家のひとりだと思います。
そして
さいごに、私が好きなパステルの画家を紹介します。
※高塚省吾
日本人画家なのですが、この画家の絵を始めて目にしたのが24歳くらいの
時でした。
当時、「黒磯美術館」というのが栃木県の黒磯市に
あったんですね。
そこで目にしたのですが
パステルで描かれていて、
パステルでも、こんなに重厚感のある素敵な絵が描けるんだ~と
感動した覚えがあります。
図書館でも、画集が置いてあり幾度か読んでいました。
絵に対する姿勢についての文章で
こんなことが書かれていました。
絵を描くと決めたら、
他の趣味的な事は一切やめて
すべての時間を絵を描くことに使いなさい・・・。
そんな内容の文章でした。
そこに、高塚画伯の絵に真摯に向き合ってきた姿勢
が感じられていて、そうしてこの作品たちが生まれたんだなと
感銘を受けたのを覚えています。
高塚省吾画伯の絵は画像として
このブログには載せることができなかったので、
どんな絵を描く画家さんなのかが分かるように
秋華洞さんの動画をお借りして掲載させていただきたいと思います。
高塚省吾画伯の絵も
検索するとたくさんの素敵な絵画画像を見ることができますので
ぜひ、見てみてくださいね。
パステルという画材
パステルは、顔料と微量の水溶性の接着剤を練り固めて棒状にしたものです。
接着剤には「アラビアガム」「糖類」を使用することもありますが
「トラガカント ガム」を使用します。
これは中東に生息しているマメ科の植物の樹液で
ガムペーストの原料の一部だそうです。
古い時代には「はちみつ」を原料としていたようですよ。
パステルは弱い接着剤では固まりにくいものがあり
「白亜粉」や「ごく微量の「石膏」を加えて作っています。
この、白亜粉や、石膏の白を加えることで
「パステル」のパステルカラーができるという訳なのです。
顔料と、接着剤を加えてよく練ったら、
大理石やガラスの板の上で転がしたり、小さな穴から押し出して
棒状にして、自然乾燥で固めます。
この、パステルという画材は
15世紀イタリアでも存在していたようで
レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿から、パステルの作り方
が見つかっています。
パステル画の魅力
パステルの魅力は、その鮮やかさだと思います。
混色ができないことが難点ですが、油彩画や水彩画と違って
混色で色を作り出すことをしないので
色鮮やかな絵を描くことができるます。
パステル画が本格的に流行したのは
フランスなどのヨーロッパ諸国で18世紀中頃に
肖像画の需要が増して、鮮やかで明るく、軽妙な色調が
好まれた背景があります。
当時、ガラスの板の量産ができるようになり
宮殿にも大量のガラスを使用して
明るくなった室内では
パステルを使用して描いたつや消しの画面に
新しい魅力を感じたのかもしれません。
それからもう一つの魅力は
油彩や水彩と違って、画材の携帯に便利という事です。
パステルが日本で広まったのは
戦後のことで
明治から、大正時代にかけて日本の画家は
ヨーロッパに西洋画を習得するために留学に行きました。
東京美術学校(今の東京芸大)で黒田清輝に師事した
矢崎千代仁(1872~1947)は、パステルという画材に
魅かれて多くのパステル画を残しています。
速写性と携帯性に優れているパステルは、各地で絵を描きながら
旅するには最適な画材だったんでしょう。
パステルの種類
パステルの種類は大きく分けて
〇ソフトパステル
〇ハードパステル
〇オイルパステル
〇パンパステル
の4つです。
ソフトパステルは、柔らかく、ゴンドラパステルという名前の
日本のパステルが有名です。
ハードパステルは、固いので絵画ではクロッキーやエスキースによく使用されます。
オイルパステルは、ワックスと油分を含むパステルで
クレヨンに近くて、油絵のような
厚く深みのある表現ができます。
他のパステルよりも画面への定着があります。
パンパステルは、お皿の容器に入った、化粧品のような
パステルです。
指で取ってのばしたり、スポンジや筆で
取って画面に刷り込むようにして使用します。
ソフトパステルと、ハードパステルのちょうど中間の固さで
絵を描くときにちょうど良く
発色もいいので愛用しています。
パステルのほとんどは外国製なのですが、
私が試してみたのは
日本製のゴンドラパステルとファーバーカステルと
スタビロの3つのメーカーのものになります。
本格的にパステル画を描く方は、混色で色を作り出すことが
できないので、50色から100色といったように
たくさんの色数のパステルを
持って描いています。
私は主に、油絵の下絵やトロワデッサンのために
パステルを持っているので
画像のような数くらいしか持っていないのです。
こんな、鉛筆型のパステルもあります。
それから、パステル画を描くときに
必要な道具は↓これですね。
左側の道具は、液体状のフィキサチーフを画面に
吹きかける時に使います。
ちょっと、珍しいですよね、
細い部分を液体の中に入れて、
反対側の部分から思い切り息を吹きます。
すると、ちょうど真ん中の部分から、霧状に
なったフィキサチーフが噴射されて
缶入りのフィキサチーフを購入しなくてもこれで
フィキサチーフを画面に定着させることができます。
右側の缶はパステル専用のフィキサチーフです。
パステルは定着力が弱いので、作品が仕上がったら
フィキサチーフ(定着液)をかけて保管しましょう。
保管するときは
「グラフィン紙」という、トレーシングペーパーのような
半透明のつるつるした紙を
画面にあてて保管しといてくださいね。
そのほかに
綿棒や脱脂綿それから摺筆(さっぴつ)もあります。
いずれも、画面の上のパステルの粉を広げてのばしたりするのに
使用します。
パステル画に適した画用紙
私が一番おすすめする画用紙は
「ホルベインのパステルマーメイド紙」です。
なんだかいつも、ホルベインさんのメーカーばかりおすすめしていますが
やはり、市場に多く出回っていて
購入しやすい!という点からおすすめしたいのです。
そのほかにも、「パステルスケッチブック」で検索すると
たくさんのパステル用の画用紙が出てきますので
予算や好みに合わせて
用意されるといいかと思います。
パステル画は色のついた画用紙を用意しよう
彩色画材としてのパステルが広まっていったのは
紙の製造とも関係が深くて
パステルが利用され始めて急速に広まったのは
17世紀ごろといわれています。
それも、かなり急速に広まったらしく、
それには、紙の普及が関係しています。
ヨーロッパで最古の製紙所は、イベリア半島のバレンシア近郊のシャティバだと
いわれています(1056年の記録)
イベリア半島は、スペインとポルトガルのある
半島のことですね。
バレンシアはスペインのちょうど東海岸沿いの町です。
イベリア半島の紙はヨーロッパに輸出していて、
使い古したロープや麻布を水車や臼でたたき砕いたもの
を紙の原料としていましたので、書写の紙として
使用するには仕上げ加工が必要でした。
対策としては・・・。
製紙の段階で、着色して土性顔料・大理石の粉・炭・灰を
すき込んで最初から色のついた
紙を作ってしまう事でした。
そうすることによって
腰のある、帳面に微細な凹凸のある画面
の画用紙が出来上がります。
この紙に使用する筆記具としては、チョークが木炭が適していました。
それまでは、
羊皮紙といって、動物の皮に文字を書いていたので
安価で広い画面がつくれるこの紙は普及していき
それに伴って
筆記具としてのチョーク・木炭は広まっていったという訳です。
で、この有色の画用紙は、絵画制作の中で
油絵の標準的な技法である
有色の下地を利用して絵を描く「トロワデッサン」「3色デッサン」と呼ばれるものを練習するのに
ちょうどよくて
製紙技術が向上した、18世紀後半以降には
木炭デッサンやパステル用に
亜麻を原料とした美術用の用紙が誕生します。
これを
通称「アングル紙」といいます。
画家アングルが好んで使用したことでこの名前が
付いたそうです。
パステル画の特徴と描き方
パステルは、油彩や水彩と違い、白みがかった色彩で不透明
なため、その特徴を最大限に活かすために、白い紙の上に描くのではなく
あらかじめ
着彩してある有色下地の上に描くとパステルの魅力が
最大限に発揮できます。
有色の下地もあらかじめ、いろんな色がついている画用紙を
購入して描くのもいいのですが
中には
白い画用紙に好みの色を水彩絵の具で塗って
そうしてからパステルで描く画家さんもいるようです。
パステルの描き方って
たくさんネットの上では紹介されていますが
本当は、描き方というものは、無くて・・・・。
パステルという画材の特徴を理解して
画家の発想力を使って、無限の描き方があるのが本当のところ
じゃないかと
私は思うのです。
下に、パステルの特性を理解した、描き方を3つご紹介しますね。
描き方①
パステルは混色が基本的にはできません。
基本的には・・・といったのは、油彩や水彩絵の具のように
パレットの上に2色から3色4色と色を
混色してあらたな色味を作ることができないという事です。
なので、
色を重ねて塗る
もしくは
並置混色のように、2色の色をストライプのように並べて
遠目から見たときに混色して見えるような
色味にすることです。
ハッチングといって、何本もの線を重ねて混色をしていくという
方法で、思い描く色を作り出していきます。
描き方②
パステルはぼかしが簡単にできるので
濃淡を作るときに、指、スポンジ、固めの筆を使用して
ぼかすことができます。
だけど、逆にシャープな線や細かい描き込みができない
ので、そうした描き込みをしたい場合は
色鉛筆と併用すると細かい描き込みをすることができます。
また、パステルは、画用紙に刷り込んだ時は
粒子が画用紙の表面上にくっついているだけの状態
なのですが、時間の経過とともに、画用紙の繊維の中
に入り込むのか、パステルの粒子が画用紙になじむ
ので、パステルで色を付けた後に
色鉛筆で細かい部分を描き込むという描き方を私はしています。
この描き方で描いた絵がこちら↓になります。
描き方③
パステルは水溶性の接着剤で固めてあるので
パステルで描いたあとに、水を付けた筆でこすると
水彩絵の具のような効果を出す事もできます。
また、
水彩絵の具でも、不透明水彩絵の具と併用して
描くこともできます。
パステル単独だけで描くよりも、
色鉛筆や水彩絵の具と併用することによって
多彩な表現ができるので
単純にパステル画といっても
たくさんの表現方法が作れることが分かっていただけるのでは
ないかなと思います。
色を塗る順番と色数
パステルでも、水彩絵の具でもそうなのですが
最初に黒や濃い色で描いてしまうと
後で修正できなくなってしまうので、描き始めは
明るい・淡い色から塗り始めます。
塗る場所は、風景だったら、距離の遠い場所から手前へ
静物画であれば、背景から塗っていくといいでしょう。
パステルは混色では色を作り出し事は難しいので
最初は色数を多めに購入しておくことをお勧めします。
私は、ファーバーカステルのセミハードパステルは
セットで36色
ヌーベルパステルは24色
鉛筆型のスタビロのパステルは、11本の合計
71色を用意しました。
これくらいあれば、風景や人物などほとんどのものが描けます。
最初から70色も無理!!という方は
36色あれば十分ですよ~。
また、モノクロで描くもの素敵ですし、1本づつ買いそろえて
いくことも楽しいのでそれでもいいと思います。
パステル画を額装・保管するときの注意点
パステル画は画面への定着が強くないので
指や衣服に画面が触るだけで落ちてきてしまいます。
額はごく普通のデッサン額で大丈夫ですが
ガラスはアクリル板ではなくて
ガラスの方が望ましいです。
それはどうしてか? というと
アクリル板は静電気がおきてしまいパステルの粉が静電気で
ガラス面に付着しやすいからなのだそうです。
そして、必ずマットを挟んで、画面とガラス面が
作品面に付着しないようにすれば問題ないです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
パステルの画家って意外に少ないようです。
だけど油絵を描いている方なら
きっと下書きやエスキースの段階で使っているはずです。
パステルの技法って
絵画の分野では、あるようでないような・・
そんな画材です。
単独で絵を描いて仕上げてもいいですし
色鉛筆や水彩と組み合わせても使うことができますし。
画家の発想力しだいでいろんな使い方
ができる画材だと思います。
今回、この記事の作成するために、パステルという画材について
勉強しました!!
勉強していくうちに、いろんな可能性をもった
画材であることが再発見できて
油絵の下書きのためじゃなくて
パステルだけで
ちゃんとした絵画作品を制作してみたいな!
そんな風に思いました。