紙の上に油絵の具で描くには?画家ロートレックの描き方

空と四葉のクローバーと虹の画像

紙の上に油絵の具で絵を描く方法について調べてみました

こんにちは。

たくさんの画集を眺めていると、絵のタイトルの次にその作品が何に描かれているか、どんな絵具で描かれているのかといった解説が載っていますよね。

それで

画家ロートレックの画集を眺めていて、ふと、気になったことがあるんです。

画家ロートレックはリトグラフの作品が有名ですが、多くの油絵の作品も残しているんです。

その、油絵のほとんどは「厚紙」の上に油絵の具で描かれているのです。

直接、紙の上に油絵の具で描くのは、絵具の剥落の原因になるし、それに発色も良くなく不適切なのでは?

この、画家が紙の上に油絵の具で描いた理由や、その技法のメリットとデメリットについて調べてみることにしました。

紙の上に油絵の具で描くことのタブー

シロツメクサと太陽の光の画像

通常は油絵の具は支持体(絵を描く土台になるもの)に描くときに油分が支持体の中に吸収されないように絶縁層を塗ってから描きます。

絶縁層には、キャンバスだったら膠と顔料や石膏などを混ぜたものを塗ります。

そうして

油絵の具の油分が、支持体の中に染み込まないようにしてから絵を描きますが、

なぜ絶縁層を施してから描くのかというと、油絵の具の油分が支持体を酸化させてしまい、時間の経過とともにもろくなるからと学んだのですが、

ホルベインのサイトの解説によると

油の酸では、あれほどボロボロにはならないと書かれていました。

酸化で支持体がボロボロになるというよりは

むしろ、油の硬化後の硬さに画面が追随できずに紙自体がもろく、弱くなることによって崩れるそうです。

画用紙の厚さでは、持ち上げると崩れてしまうそうです。

しかし、厚みのあるものなら大丈夫だそうで、ダンボールの厚さなら大丈夫なようです。

この解説の中では、紙に油絵の具で描くと経年で劣化してぼろぼろになるけれど、

欧州(ヨーロッパ)の紙に描かれている油彩画は、ドーサを厚く引いてあるので、油彩でも描けるのだそうです。

そういえば、

19世紀の画家たちは、好んでダンボールに描いたそうです。

その話を聞いた時、ダンボール?

経年で劣化してしまわないのだろうか?と疑問に思ったのですが、当時のダンボールは、今現在、私たちが使用しているダンボールの素材とは違う物だったらしいので、大丈夫なのだそうです。

詳しい調査資料がないために、不確実な話になってしまうのですが、

紙(画用紙くらいの厚さの紙)に油絵の具で直接絵を描くと経年劣化で紙がボロボロになってしまうことは本当のことらしいです。

しかし、段ボールくらいの厚さの紙なら油絵の具で描いても紙はボロボロにならずに作品として残っていくそうです。

紙の上に直接油絵の具で絵を描いた画家「ロートレック」

トゥールーズ・ロートレック
「休息する女」
(1896)

上の画像はロートレックが31歳の作品です。

ロートレックは36歳で天寿を全うしているので、これは晩年の作品と言ってもいいだろうと、画集の解説には記載がありました。

この作品も、厚紙に油絵の具で描いてあります。

フランス・パリで活躍した画家「トゥールーズ・ロートレック」はたくさんの

厚紙に油絵の具で描いた絵をのこしています。

図書館でロートレックの画集を借りてきて、絵を見てみましたが、60枚の作品の中で厚紙に油絵の具で描かれた作品は21点ありました。

キャンバスや板に油絵で描いた数と同じくらいの数の作品を紙の上に描いていたんですね。

ホルベイン画材研究Q&Aの説明にあったように、当時の欧州の紙にはドーサが引かれていたので、問題がなかったのかもしれません。

それに、

厚紙と表記されているように、画用紙のような薄い紙でなくて、ダンボールくらいの厚さの紙に描かれているので問題がない、ということなのだと思います。

画家ロートレックってどんな画家?

トゥールーズ・ロートレック
「エグランティーヌ嬢一座」
(1896)

ロートレックはリトグラフの作品が有名ですね。パリのムーランルージュのポスターを手掛けて一躍有名になりました。

1864年のフランスに生まれたロートレックは

伯爵家の長男として生まれて、両親に大切に育てられましたが、

弟が亡くなったことをきっかけに両親は離婚してしまいます。

離婚後は、母の元に引き取られ、父の友人画家から絵の手ほどきをうけながら成長していきますが、

ロートレックが13歳の時に椅子から立ち上がろうとしたとき、左の大腿骨を骨折してしまいます。

そして、次の年の14歳の時も今度は右の大腿骨を骨折してしまうのです。

それをきっかけに、ロートレックの下半身は子供のままで成長が止まってしまいます。

両足を骨折して、病気になってから、父親のもとにもどりますが、

父親からは疎まれて、孤独な子供時代を過ごすことになるのです。

1882年にパリにでて、ロートレックは本格的に絵を学びますが、障がい者としての偏見や差別のストレスからか、デカタン(退廃的)な生活を送るようになってしまうのです。

そして

夜の娼婦・踊り子といった人達に共感をよせて、

娼婦や踊り子たちを題材にした絵をたくさん描きました。

デカタン(退廃的)な生活・強い酒の「アブサン」(薬草系のリキュール)によるアルコール依存症、梅毒の病気をわずらって、次第に精神と体を病んでいったロートレックは

家族から、強制療養所(サナトリウム)に入れられてしまいます。

退院して、母親の元にもどるのですが、そこで脳出血をおこして息を引き取ってしまうのです。

36歳でした。

ロートレックの病気は、両親がいとこ同士であったための近親相姦による遺伝の病気ではないだろうか、といわれています。

短い人生の中でたくさんの作品を残したロートレックですが、なぜ紙の上に油彩で描いたのかは分かりません。

キャンバスと板の両方にも油絵の具で描いていますから、何かロートレックの表現意図があって、厚紙の上に油絵の具で描いたのだと思います。

そこで、

紙の上に油絵の具で描くとどのようなメリットがあるのかを調べてみました。

紙の上に描くメリット

厚紙上の油絵の具の特徴はこんな感じになります。

1・明るく強い発色になります。(ガッシュ絵具を使用した時のような発色になる)

2・半被覆の画面になる。

油絵の具で塗ると、透明な色の発色になりますが、それは乾性油の中に顔料の粒子が浮いた状態で画面に定着するためなのですが、

紙の上に油絵の具を乗せると、油分が紙の繊維の中に浸透してしまい、画面の表面には顔料の粒子が多く残ることにより、半被覆の画面となります。

それによって、隠ぺい性(下の色を覆い隠す力)が増します。

3・2の理由から、厚塗りを必要としないで、フラットな画面を作ることができます。

4・2の効果から、ハッチング(細い線を重ねて描く方法)の表現が可能になります。

5・艶のない、マットな質感の表現ができます。

油彩の透明性や厚塗りをしないで描くことができることが分かります。

これは、油彩画のデメリットである、描くのに時間がかかることを解消した方法でもあるのではないかな?と思いました。

ロートレックは、ドガの影響を受けていたというし、踊り子たちを絵にするには、

即興的な描き方をしなくてはならなかったということも考えられます。

紙の上に油絵の具で描く時の注意点

空の画像

紙の上に油絵の具で描くときの注意点をまとめてみました。

1・できるだけ、乾性油を少なくした方がいので、油絵の具は揮発性油で十分に溶くこと。水彩絵の具で塗るときのような濃さにします。

2・画面に塗る時は、絵具で画面全部を覆いつくさないで、部分的に使用します。

画用紙の画面の色自体を活かして、絵具でデッサンもしくはスケッチをするような感じで絵具を塗ります。

3・ペンティングオイルや乾性油を入れないで使います。
揮発性油のみで、描きます。

4・展示するときは、紙が焼けないように気を付けましょう。

紙の上にも絶縁層を施すことで油彩絵具で描ける

ピンクの小さい花の画像

ダンボールくらいの厚さの紙に、自分でドーサを引いて描くことができますが、

日本画で使用するドーサは、ミョウバンが入っているため適しません。

そこで、

自分で膠を溶いて紙に塗るのもよいのですが、膠を作って画面に塗るのは大変なので、市販されている画用紙があります。

それが、Canson(キャンソン)というメーカーから販売されている

Figueras(フィゲラス)という商品です。

この紙は特に油彩用につくられた丈夫で高品質な紙です。高性能バリアが油や結合剤、水を均質に吸収するそうです。

また、表面の絵具層が優れた耐久性を発揮します。

さまざまなサイズの紙が用意されていて、ロール紙もあるようです。

Cansonさんのホームページサイトは下のリンクからご覧になれますので、サイトのURLを掲載させていただきました。

http://www.canson.com

figuerasのページはこちらからご覧になれます。

まとめ

私はたくさんの画集を見ていく中で、技法の所に「紙に油彩」と書かれた作品をたびたび目にしてきました。

19世紀頃の絵画だったので、当時のヨーロッパでは、紙に油彩で描いても大丈夫だったのだな・・・

でも、紙の上に油彩で描いたら、油絵の具の油を紙が吸い込んでしまって、

油が、滲んで絵としてはどうなのだろう?

疑問に感じていましたが、今まで油絵の具はキャンバスに描くもの、そう思って紙に描いてみようとは考えもしませんでしたが

今回、画家ロートレックの画集を眺めていて、こんなにも紙の上に油絵の具で作品を描いているのは

何か制作上の理由があるのだろうと調べてみることにしたのです。


調べて分かったことは、当時の欧州(ヨーロッパ)では紙に厚いドーサが引かれていたので、油絵の具で描いても作品が残っていること。

ドーサを引かない紙でも、厚紙くらいの紙であったら、油絵の具で描いてもボロボロにはならないこと。

紙の上に油絵の具で描くことのメリットとデメリットなどなど・・・・。

それから、市販品として油彩画専用の紙が作られているということも分かりました。

この、figuerasという商品は、油彩だけでなく、さまざまな画材にも使用できそうなので、今度購入して試してみたいと思います。

いつも、読んで頂きありがとうございます!

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