混合技法とはⅡ(アキーラ絵具の使い方)

人物のシルエットと夕焼けの風景画像

アキーラ絵具について

前回の記事 混合技法とは についての記事はこちらを参照してみてください。

こんにちは。

混合技法Ⅰの続きになります。

アキーラ絵具ってすごいな!

と思うのは水性で水彩絵の具を混ぜて使用することもできるし

(耐水性になるので、色を重ねて塗っても下の絵具層が溶け出してこない)のと、

油絵具とも混ぜて使用することができる(すぐに乾いて重ねて塗ることができる)

アキーラ絵具はアルキド樹脂という展色剤(顔料をくっつける糊の役割のこと)を使用しています。

アルキド樹脂とは何か?・・・ネットで調べてみました。

アルキド樹脂とは

ポリエステルに属する樹脂のグループ。油脂は脂肪酸とグリセリンからなるエステルである。油脂にさらにグリセリンを加えて反応させると油脂およびグリセリンの中間の性質(どちらとも親和する)ものを自由に作ることができる。

油脂は水に溶けない、グリセリンは水に溶ける。ので水にも、油脂にもくっつく(親和する)性質のものができるんですね。

なので、混合技法Ⅰで紹介した「テンペラ絵具」のように、水で溶いて描けるけれど油絵具の上にも描けるんです。

絵画教室で頂いたテキストには

アキーラはテンペラよりも塗膜が堅牢であり、安価、カビにも強い。油との相性はテンペラより良い。「混合技法をするためにうまれた絵具をいっても過言ではない」

そうに書いてあります。

アキーラを油彩画で使用すると、細部の描き込みが簡単にできるようになります

油彩絵具だけで描くと、どうしても細かい描写がむずかしいですよね。

油彩絵具は豚毛の硬くて、太い筆で絵具を画面に盛り付けるようにして描いていきます。

でも、細かい描写をしたいな・・・そう思ったとき、油彩絵具と豚毛だけではなかなか、細かく描くことってできないんですよね。

私がアキーラ、絵具を知る前の絵は・・・・

10年前に描いた絵です。

キャンバスに油彩絵の具だけで描きました。

個人の好みはいろいろなので、大胆に、絵具を盛り付けた描き方をしたい人、繊細に緻密に描きたい人・・・さまざまだと思うんです。

私は結構細かく描くのが好きで、細かく描いていたんですが、油彩絵具だと限界があるんですね。

貝殻のひとつ、一つの模様とか、レースの細かさとか、絶対に油彩絵具だけでは無理が・・・。

そこで、

アキーラ絵具で加筆します。

画像がすこしぼけてしまいましたが・・。

白い線で背景にハッチングをしてあるのがわかるでしょうか・・?

真っ白だと、背景の色と差が付きすぎてしまうので、アキーラ絵具に少し紫とイエローオーカーの水彩絵の具を混ぜてあります。

ハッチングだけじゃなくて、細かく描写したいときにも油彩絵具ではなくて、アキーラ絵具を使用するといいですよ。

油彩を薄く溶いて、水彩用の細い筆で描けるんじゃないの?

そう思うでしょうが、油彩って透明なので、仕事があんまり生きてこないです。(実際に絵を描いてみると分かると思います)

アキーラ絵具は油彩絵具と水彩絵の具を結び付けるので

画面に油彩絵具と水彩絵の具、両方とも使えます。

絵を描く人のアイデアで、さまざまな描き方ができる絵具です。

ただし、

アキーラ絵具で混合技法を行う上での注意点

絵具って、同一の素材であれば剥がれない画面を作ることは簡単なんですが、

混合技法は違う素材をくっつけるので、条件と制約があります。

まず、

①アキーラ絵具の下の油彩絵具は「適度に生渇きであること」

手で触って絵具が付いてくるようではだめで、「指触乾燥」と言って、完全には固まっていないけれど、手で触って絵具が付いてこない状態をいいます。

画面がガムテープのように、少し粘り気があるような状態の時に加筆します。

②油彩絵具が大量に重なり、画面の吸収性が失われているときには加筆しても、はじいてしまって綺麗に細い線は描けません。

制作途中の作品画像

そこで・・・

①に対する攻略法

粘着性の強い、比較的乾燥の早い樹脂(ダンマル溶液)の入った画溶液を使用します。(ダンマル2:サンシックンドリンシードオイル)1の割合の画溶液。

だけどこれを調合するのは面倒くさいので、私は市販されている調合済みのルソルバンを使用しています。

これです

②の攻略法

アキーラ絵具での加筆は最初の1~3層ぐらいにとどめておいて、描き込んで、上層に行くに従い、油彩画だけで仕上げています。

でも、アキーラで加筆をしたくなって、アキーラ絵具がはじいてしまってうまく乗らないときは、指の腹でこすって、薄く全体になじませると描きやすくなります。

画面に水を付けるのは心配だわ、というときは「ルツーセ」スプレーをかけて描くと描きやすくなります。

10年前に描いた絵ですが、全然退色も、剥落もなく、きれいな状態を保っています。

アキーラは油彩絵具と相性が抜群であるのと、油彩絵具がアキーラ絵具をサンドイッチする状態で絵具層が重なるので、劣化、剥離の問題は全くありません。

まとめ

アルキド樹脂は、今は普通に油彩絵具や調合溶き油に入っています。パッケージに記載されているので見てみてください。

私の時代の美大受験は、6時間で一枚の油彩画を仕上げるという試験内容でしたが、

アルキド樹脂がまだなかったので、絵具をあらかじめ新聞とか漫画雑誌の間に絞り出して油を吸わせて、シッカチーフを加えて、それで乾燥を促進させてかいていたんですよ。

今、考えるとすごいやり方をしていたなと思います。

接着の役割を果たす、乾性油を抜いて、その代わりに乾燥促進剤を大量に加えて描くやり方なので、将来絵具層が剥落してくる危険があるので

このやり方を作品制作で使用するのはやめたほうがいいです。

現在は、アルキド樹脂から作られたメディウム状の乾燥促進剤が販売されているので、そんなことはしなくても乾燥を早めることができるので

そうした、乾燥促進剤を使用することをおすすめします。

今の受験生は、速乾メディウムにはアルキド樹脂の入ったものや、絵具の白にアルキド樹脂が入ったものを使用しているみたいです。

混合技法では、油絵の具とテンペラ絵具両方を使用して描きますが、テンペラ絵具を作るのは大変です。

そこで、テンペラ絵具と性質がまったく同じアキーラ絵具を使用して描く方法があります。

アキーラ絵具はテンペラ絵具と同じように使用することができますが、

アキーラ絵具で描く時は、油絵の具で描いた画面が乾ききっていない状態で塗り重ねることがポイントになります。

私は、美術の大学で学んできましたが、

時代とともに、使用する画材もどんどん進化していて、「アキーラ絵具」もまだ販売されていなかったし、

アクリル絵の具も今のような品質のものはなかったので、

絵画教室に通って勉強したことは本当に良かったと思っています。

混合技法や、古典絵画技法という概念は学んで知っていましたが、新しい画材や、その画材を昔の技法に応用して使うという事は

学ばないと得ることができないものですよね。

次回は混合技法を使用した画家たちについての記事を書いてみたので、参考にして頂けたら嬉しいです。

関連記事 混合技法とはⅢ

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