銀筆(シルバーポイント)とは
鉛筆が登場するまで使用されていた、金属を使った描画材料のこと。
銀よりも固い画面であれば、なんでも絵を描くことができます。
銀が画面にこすりつけられることによって、削れて色がつく訳です。
「銀」の他にも、鉛、銅、真鍮、アルミニウムでも同様に描くことができます。
銀を使用する場合はシルバーポイント、その他の素材を使用する場合はメタルポイントと呼んでいます。
銀筆が描画の材料として使用されていたのは、16世紀中ごろで、昔の巨匠たちのすぐれた銀筆でのデッサンが残されています。
しかし、その用途はだんだんとすくなくなり、レンブラントの「サスキア」(1635年)の肖像画が当時の最後の秀作と言われているそうです。
イタリアの1400年ごろに、チェンニノ・チェンニーニが書いた「技術の書」という技法書にはこんな風に書かれています。
烏賊の骨で擦って磨いた黄楊の板を用意し、それに鶏の腿や手羽の粉骨を唾液で捏ねたものを刷り込み、その上に描く。
また、板の代わりに羊皮紙や紙でもよいとしています。
支持体は何に描いたらよいのか
しかし、これらの多くの作品は現在では剥落してしまっているそうです。私はモデリングペーストという、大理石の粉末を合成樹脂で練ったものが市販されているので、それを使用しています。
支持体(絵を描く土台となるもの)に施すプレパレーション(下地塗り)は膠水を使用したチタニウムホワイトで処理するのがよいのですが、家庭で「銀筆画」を楽しみたいときに膠水を使用するのは困難です。
そこで、板・パネルにモデリングぺーストを塗って支持体(絵を描く土台となるもの)を作る方法が一番手軽にできる方法です。
銀筆はどこで手にはいるの?
全国の画材屋さんで注文すれば手に入ります。ただ、銀筆を使用する方が少ないので、取り寄せになってしまうかと思います。
私は東京、渋谷にある「ウエマツ画材店」で購入しています。
銀のほかにも、真鍮や銅の芯が手に入ります。
銀筆画の修正と加筆
銀筆で絵を描いていく時の注意点は、間違えても消しゴムで消せないことです。
描き出しはできるだけ、薄く、筆圧を軽く描いていきます。
私はあらかじめ下書きをしておいて、それをモデリングペーストの下地を塗った画面にトレーシングペーパーを使ってトレースして描いています。
トレースするときは鉛筆で描きます。
銀筆で描き込みが進んできたら、下書きとして描いた鉛筆の線は消すようにします。(鉛筆の線は消しゴムで消すことができます)
消しゴムはデッサンで使用する練り消しゴムがいいですよ。
銀だけの絵は調子が淡く、印象が弱くなるので水彩絵の具で加筆することもできます。
加筆するときに、何回も筆でなぞると、最初に乗せた水彩絵の具が筆で掻き出されて取れてしまうので、面相筆の細い筆でハッチング(細い線を何本も重ねて描くこと)で描いています。
仕上げ
完成したら、銀筆画は接着成分が入っていないため、手でこすると画面から取れてしまいます。なので、市販のスプレー式アクリル系のワニスを吹きかけます。
市販されている「フィキサチーフ」を吹き付けて完成です。
まとめ
*シルバーポイントとは鉛筆が登場するまでに使われていた金属を使った描画材料のこと。「銀」の他にも、鉛・銅・真鍮・アルミニウムでも同様に描くことができます。
*銀筆画は、銀の淡い色調が魅力な絵を描くことができます。
*支持体(絵を描く時の土台となるもの)は板・パネルにモデリングペーストを塗ったものに描くのが一番手軽で描きやすい。
*絵具を使わないので、油彩画よりは匂いが出ない、筆を洗ったりのメンテナンスがかからないなど、自宅で絵を描いてみたい人にはお勧めの技法。