絵に描かれているサインについて
こんにちは。
今回は、絵に入れられている「サイン」について調べてみることにしました。
「サイン」って、今まで意識したことはなかったのですが
個展を通して、「サイン」について考えるようになったんです。
絵のサインというと
15世紀の画家「アルフレヒド・デューラー」のサインが私の中ではとても印象に残っていて、絵に作者のサインを入れることは、15世紀からすでにあったんですね。
ウサギの足元に書かれているマークのようなものがデューラーのサインですね。
アルファベットのAという文字とDという文字を組み合わせて、マークのようなサインが書かれています。
1502年の制作した年と一緒に入れられています。
15世紀という大昔から、絵には作者のサインが入れられていたのですが、それはどうしてなのかな・・・?
ずっと絵を描いてきたけれど、そういえば、サインについてはよく考えたことなかったなぁ。
そう思い、いろいろと調べてみたのです。
絵にサインを入れる意味
絵のサインは作者が誰であるかの証明です。
では、なぜ
作品が制作者本人のものであるかが重要になったのかというと
絵が資産的な価値を持つからなんです。
そのほかに、現代ではインターネットやSNS上に挙げた絵が他の誰かによって使用されてしまった場合に、この作品を制作したのは、誰であるかを証明できるようにするという目的もあるのです。
あなたが描いた絵が、
将来、手を離れてだれかの持ち物となったときに、確実に作者がわかるようにしておくことは、画家の最低の努力なんですよ、とある画家さんのブログに書かれてありましたが
そのとおりだな・・・と私も思います。
中には
誰が描いたものであるか、
気にしない人もいるかもしれませんが
やはり
○○さんの描いた絵だからこそ、欲しいと思って購入したと思うのですね、
その、○○さんが描いた、というところがポイントで、どこのだれが作ったのか分からないものでもいいから購入するのとはまた違った動機で絵って購入されるものなんだと思うのです。
それから
絵は資産であるという考え方を近代・現代ではしますが、
その、購入した作品がまた、誰かの手に渡っていく場合にやはり、素性のわからない本当に作者の描いた作品であるかどうかわからないものを手に入れようとは思わないでしょう。
そういった意味でも、作者が誰であるかといったことを明確にしておくことは
大切なのですね。
日本画のサイン
日本画の「サイン」については洋画とすこし違っていて
日本画の場合も、洋画と同じように作品の隅に、だれの作品であるかがわかるように名前を入れるのですが、名前と一緒に
「落款」
が入れられます。
*落款とは落成款識(らくせいかんしき)の略です。書画を作成したときに押印するハンコのようなもので、作者の名前や制作年月などを記載したものがありますが、通常は書号や画号を記載したものを記します。
篆刻のことについては
篆刻雨人さんの動画がとても分かりやすく説明しています。なので、そちらの動画をお借りすることにしました。
18分の動画です。
篆刻の歴史や、作られてきた素材や篆刻の役割なんかについても解説していて、興味深く拝見させていただきました。
初心者にもわかりやすいように解説してくれていますので、ぜひ、ご覧になってみてください。
洋画のサイン
洋画のサインについては、始まりはルネッサンスの時代からなのでしょうか?。
15世紀のルネッサンス時代の画家たちは「工房」と言われる場所で、親方の元で絵を制作していました。
ルーベンス(1577年~1640年)の時代でも、実際にはルーベンスが一人で絵を仕上げたわけではなくて、ルーベンスが親方となって、原画を描き、原画をもとに弟子たちに絵を描かせていたそうです。
下書きをルーベンスがして、着彩は弟子が描いたり
顔の部分はルーベンスが描いて、他の部分は弟子が描いたりしていたようですが
作品には、ルーベンスのサインが入れられました。
工房で絵が制作されなくなって、
19世紀ごろからなのでしょうか、
絵を、一人の画家が最初から最後まで描いて、絵に証明として、サインを入れるようになったのは・・・?
こういったことが書かれている書籍が見つかりませんでしたし
インターネットで検索しても見つけることはできませんでした。
だけど、
絵に描かれたサインは、作者が誰であるかの証明のために記載していることは確かです。
版画のサイン
版画の場合は、洋画の場合とちょと違っていて、
最近になってサインが入れられるようになったそうなんです。
版画は絵の左下にエディション番号(通し番号)、そして右側に画家のサインが入れるのが現代では常識になっているようです。
*エディション番号とは限定部数のことをいいます。版から何枚の絵を印刷したのかが分かるように、何枚刷ったのかの枚数を分母に記載して、そのうちの何枚目の作品であるかを分子に記載をします。シリアルナンバーともいいます。
しかし
つい最近までは版画にサインは入れなかったようで、
19世紀の有名な画家である、ミレー、マネ、コローのオリジナル版画にサインはなかったそうなんです。
しかし
刷り師が版画を増産してしまうことを防ぐためと、作者自身が制作しましたという証明を求められることが多くなり、サインをする習慣が浸透していったようです。
絵にサインをしてもいいのは誰?
絵のサインに対する画家の考え方の違いがあるようなのです。
絵のサインの意味についてはなんとな~く分かっていましたが、現代では絵を趣味として描いている方から、プロの方までそんなに深く考えずに自分の絵が完成したら「サイン」を入れていると思うのです。
ですが
実は・・・
私が「サイン」について強く意識するようになったのでは、美術教師として働いていた時に、生徒が油絵を完成させたので私はその生徒によく描けているから右下隅にサインを入れてみてはどうかなとアドバイスしてサインを書かせたんですね。
そうしたら、
もう一人の同僚である美術教師は、サインをいれるなんてとんでもない!と怒り出したんです。
私が勤務していた学校には、もうひとり美術の先生がいたのですね、
その先生は、高校生は絵にサインを入れてはいけないと考えていたようです。
なぜ、生徒の描いた作品にはサインを入れてはいけないのだろう?
その時の私には理由が分かりませんでした。
どうして、サインを入れてはいけないのか聞くことはなかったのですが、生徒はびっくりして黙り込んでしまい、私も言葉が出ず、黙り込んだままになってしまったのですが。
そんなことがあって以来
絵に記載するサインは
本当に有名と認められた、画廊で絵を販売するような「大御所画家」だけに許されたものなのかな・・・?
という考えを抱くようになってしまったのです。
だけど
身近にいる、絵を趣味としてたしなんでいる方ほとんどは、サインを絵の一部として入れています。
ほんとうのところはどうなんだろう?そう考えてわからないまま現在まで来てしまいましたが
どうやら
サインについての
定義というものは、無くて
本当に自由で、画家によって考え方も、スタイルもそれぞれなのだということが分かりました。
絵にサインは入れたほうがいいの?
私は絵にはサインを入れたほうがいいという考えですね。
絵にサインを入れる意味を考えたら、絵を購入したくださったかたへの作者としての最低限の努力だと考えるからです。
絵を販売しないとしても、何年か後に自分の絵を振り返ってみたとき、あるいは家族が見たときのために、制作年や誰が描いたのかといった記載は必ず必要と思うからです。
絵にサインはいつから入れたらいいのか
絵の「サイン」って、いつから書いたらいいんだろう?
こういったことは
誰も、どこでも教えてくれないのですよね。
インターネットでいろんな方のブログを読んでみると、
画廊で絵が販売できるようになって、画廊のギャラリストやオーナーから聞いて初めて知ったといったことが書かれていました。
実は
私も、サインについてはここ最近になって知ったのです。
それまでは
何も知識がない状態でした。
私自身のことを振り返ってみると、絵を値段をつけて販売したのは25歳の時でした。
ギャラリーのオーナーが私の絵にどんどんと値段をつけていったのですね。
当時の私は、画廊で展示をして、絵をみんなに見てもらうことは考えていましたが、値段をつけて販売しようなんてことはこれっぽっちも考えていませんでしたから
びっくりしました。
大学を出て、そんなにたっていなかった私には
かなりびっくりして、こんな高い金額で販売してもいいのだろうか?と心の中はびくびくとおびえていました。
当時
サインは絵の中に入れていましたが、
絵が誰かに購入されて、私が描きましたという証明が作品には必要なのだ、という知識はまだなかったので、サインがないまま販売していたら・・・と考えると
サインを入れておいてよかったなと思いました。
絵にサインを入れるのは、絵を販売しようと考えてからでもいいと思いますし、
絵を習いたての時期からでも、絵にサインを入れてもいいと
私は(ここ、協調します)
思いますよ。
作品が誰が書いたのか、制作年数などがわかりますからね。
サインはそれ以上でも、それ以下でもないと思うのです。
初心者でも、ベテラン一流画家でもサインは入れたほうがいいのです。
絵のサイン入れ方
サインの書体はどんなものがいいのか?
縦書きなのか、横書きなのか
文字の色は何色なのか?
といった疑問が出てくると思いますが、
サインは、あくまでも、誰が描いたのかの証明なので、絵の邪魔にならないように、
絵の画面の右か左の隅に、バランスよく入れればいいと思います。
写実的な絵は文字が入ることによって、平面感が出てしまうので、私はあまりサインは入れたくないので、入れない絵もありますが、そうした場合は
絵の裏側に私が描いた作品であることが分かるように、名前と制作年を書いています。
絵のサインに似たもので「裏書」というものがある
このことも
絵のサインについて調べていくうちに分かったことなのですが
絵の他に、額縁にも作者が描いたという証明書を記載する
「裏書」(うらがき)
というものがあるそうなんです。
書物や絵画に、鑑定結果を作品の後ろ側に記載するのですが、その記載したものを「裏書」というそうでなのです。
裏書はもともと法律用語なのですが、美術品の鑑定にも使われる言葉なのだそうで、作品と、作品を入れておく額縁の両方に作者名と制作年、題名を半紙に記載して、貼っておくのだそうです。
まとめ
いままで、あまり気にしなかった「サイン」ですが、
個展をしてみて、この作品が誰かの手に渡った時に私が制作しましたという、証明になるので、きちんとしたサインは必要なのだと改めて感じました。
そして
絵のサインについて、調べていくうちに「サイン」に対する画家のいろいろな考え方を知ることができて、
サインに対しての画家の考え方って、千差万別なのだということ知ったんです。
教師時代に、絵にサインを入れるなんて、と怒った先生は、
多分、まだ修行の身である、高校生が
販売を目的とした絵を描くなんて、おこがましい。
そんなことを思ったのかもしれません。
だけど、サインはどんな作者でも、絵を描いた作者がいるのだから、その作者が描いたという証明として「サイン」を入れていいと思うのですよ。
サインの入れる場所やサインの文字の色は何色を使う?とか
書体は何にする?といった
クリエイティブな要素があるので、
画家のもう一つの表現の場でもあると思うのですよね。
たかが「サイン」なのですが、されど「サイン」なのだな、と今回調べてみて思いました。
作品に責任を持つためにも、きちんと「サイン」を入れていきたいと思います。