リアルで写実的な油絵を描きたい人へ

こんにちは。

今はホキ美術館に展示してあるような、リアルで写実的な油絵が人気のようです。

私は個人的に大学時代から野田弘志さんのファンで、今でも30年くらい前に購入した野田さんの画集を持っているんですよ。

野田弘志さんは

1936年生まれ(昭和11年)東京芸術大学を卒業し、日本の写実絵画を代表する画家です。

私が大学を卒業するころに野田弘志さんの絵に出会って、衝撃を受けたんです。

当時は周りは抽象絵画を描く人ばかりだったのですが

野田弘志さんは、象の頭蓋骨や動物の骨をリアルに写実的に油絵で描いていたからなんです。



そんな、リアルで写実的な油絵を描きたい・・・・

そう、私は思っていろいろと試行錯誤しながら油絵を描いてきたのですが

そんな、リアルで写実的な油絵を描くには

キャンバスと豚毛だけで、直接絵の具をキャンバスに塗っていく方法では

限界があることが分かったんです。



もう少し、早く知りたかった・・・・というのが正直な気持ちなのですが

記事として紹介することで

専門的に油絵を勉強することが難しい方に

リアルで写実的な油絵を描くための描き方を紹介してきたいと思います。

リアルで写実的な油絵といえば「ホキ美術館」

ホキ美術館をご存じですか?

ホキ美術館のホームページはこちらから

ホキ美術館は千葉市緑区にある、写実絵画ばかりを展示してある美術館です。

数年前に見に行ってきましたが、美術館自体が船のような形をしていて、美術品のような美術館でした。


480点の写実絵画が展示してあり、現在もその作品数は増え続けているそうです。

その中にも、もちろん、野田弘志さんの作品が何点か展示してあり、本物を鑑賞し、感銘を受けてきたわけなのですが



しかし

「ホキ美術館」は現在

2019年の台風による豪雨、水害被害によって現在長期休館中のようです。(2020年1月31日現在)

 

リアルな油絵を描くには油絵の歴史を知ろう

そんな、ホキ美術館に展示してあるような、リアルで写実的な油絵はどんな方法で描かれているのか

興味ありませんか?

私は、大学生の頃から興味があったんです。

だけど、当時はそんな感じのリアルな絵を描いている人はいなくて

いつも

どうやったら、古典的な、リアルな、写真のような油絵を描くことができるんだろうって、ずっと思っていました。

いろんな本を読んでみたり

美術館の展覧会に足を運んで、古典的な絵画をじっと見つめてみたり・・・



そんなことをして、なんとなくわかったのは

キャンバスには描かれていないこと

さらさらした油絵具を油をたっぷりつけて何層も絵の具を重ねて塗っていることでした。

 

技法書なんかも読んでみましたが

今一つ分かりませんでした。


今はインターネットの普及で、検索すると技法について学ぶことができますが



1990年代はインターネットもなく、

本当にどうやったら描けるのかな・・・?と思うだけでした。

リアルな絵を描くには、画材の種類と使い方を知ろう

古典絵画技法というものを知ったのはだから

10年くらい前のことなんです。

絵画教室に通い、グリザイユやカマイユというものを教えてもらい

と、同時に

インターネットで検索をして、15世紀から17世紀のヨーロッパの油絵の描き方を調べ上げて

ようやく、

描き方を知ったのです。


今の美術大学生なら、知っているのでしょうね。

情けない話ですが、1992年ごろは、

野田弘志さんや、森本草介さんや、アントニオロペスといった画家たちは、注目されていなかった?

のでしょうか?

アントニオ・ロペス・ガルシアはスペインのリアリズムの画家です。

1936年生まれの現在84歳です。

1992年ごろに、「マルメロの陽光」という映画があり、その映画を知ることによって、私はアントニオロペスに興味を持ったのです。

当時アントニオロペスは54歳くらいだったのですね。

対象物(描くモチーフ)に向き合う姿勢にすごいなぁと、感動したのを思い出します。

リアルな油絵を描くには 西洋油絵の変遷を理解しよう

大学を卒業してから38歳ごろまで、

油絵といえば、キャンバスに絵の具を豚毛で直接パレットからのせていく描き方しか知りませんでした。


だけど、38歳ごろから

絵画教室に通い始め、インターネットで検索して調べていくうちに

どうやら

油絵にも

描き方の歴史があることが分かったのです。

15世紀から17世紀までは、写真というものがなかった時代ですから、

いかに、目で見たようなリアルで写実的な油絵を描くことが重要だったのですね。


それで、

昔の画家(巨匠たち)は道具(絵の具や画溶液)や描き方をいろいろと工夫してきました。

リアルな油絵の始まりはフランドル技法から

油絵が最初に描かれたのは、フランドル地方(今のオランダとベルギー地方)なのだそうです。

ヤン・ファン・アイクが最初に油絵を考案して描いたそうで、

「アルノルフィニ夫妻の肖像」という油絵は有名ですよね。

これは

キャンバスには描かれていないって、知っていましたか?

この絵は板の上に描かれているんですね。

それも、直接、木の板の上に描いているのではなくて、白亜地という、下地に白い絵の具の地塗りをした上

に描いてあるんですよ。

白亜地というのは

石灰のことで、あの、学校の校庭に白墨でラインを引く、あの白い粉のことなんです。

日本で取れる石灰は、ヨーロッパで取れる石灰より質が良くなくて、絵画には使えないのだそうです。

それで、ヨーロッパから石灰を輸入して、絵画材料として使用しているそうなんですね。

その、白亜を、膠(ゼラチン)で溶いて、板の上に地塗りとして塗った後に、油絵で絵を描いていきます。

こういった描き方のことを

フランドル技法をいいます。

今は白亜地の作り方がインターネットの動画で見ることができます。

白亜地の作り方を動画にして発信しているshigenobuさんの動画をお借りしてみましたので、どんな工程を経て出来上がるのかご覧になってください。

https://www.youtube.com/watch?v=t-dy3ebEp0I

なんだか、とっても大変そうです。

家庭で、もっと手軽に白亜地を作る方法はもう一つあります。

それは

市販の、アクリルエマルジョンに白亜を溶かしたものが販売されているので、それを使う方法です。

ホルベインさんが、動画で説明していますので、そちらもご覧になってみてください。

ホルベインさんの動画をお借りしました。

https://www.youtube.com/watch?v=_iytjrT63HE

ホルベインのアブソルバンの他にも、文房堂さんからも、μグランドという商品名で同じようなものが販売されています。

私は、ホルベインのアブソルバンも、文房堂のμグランドも両方使ってみましたが、

ほとんど、どちらも変わらないいい感じの白亜地を作ることができました。


フランドル技法は、

この、白亜地の上に油絵で絵を描いていくわけなんですが、この、白亜の白の地を利用して、白の絵の具を使わないで

油絵を描いていく方法なんです。

 

なんだか、水彩画の描き方と少し似ていますよね。

そのため、色彩が鮮やかで、黄変せずに保存されています。

フランドル技法はイタリアに渡りテンペラと油絵具の混合技法が生まれた

フランドル地方で生まれた油絵は、イタリアに渡りフィレンツェでテンペラ絵の具と油絵の両方を使って描かれるようになります。

テンペラ絵の具ってなに?

テンペラと油彩の混合技法ってなに?と

思った方は

こちらの記事をご覧ください。

混合技法とはⅠ

混合技法とはⅡ

フィレンツェ技法は、さきほど紹介した、フランドル技法とは違って、下地は石膏を使用して描かれていました。

石膏って、あの石膏なんですが、

どんな風に作っていたのかは、大路誠さんのサイトに詳しいことが紹介されていますのでそちらのほうを紹介したいと思います。

大路 誠さんのサイトはこちらからです↓↓↓↓↓

http://ojimakoto.com/making_sekkou.html

石膏での地塗りも吸収性のある下地ができるので、油絵の技法のひとつである、グレージング(おつゆ描き)が良くできます。

グレージングの技法は、非吸収性の下地では、なかなか油絵具が下地に吸い込まれずに難しいので、

グレージングを使って油絵を描くときには、吸収性のある下地を使います。

【リアルな油絵の変遷】ヴェネツィア技法

16世紀に、イタリアのフィレンツェからヴェネツィアに油絵が伝わると、板の上に描かれていた油絵が、キャンバスに描かれるようになります。

キャンバスは麻布ですね。

麻の布地を木製の枠に張って、その上に絵を描くという、現在のキャンバスと同じものがこの時代にできました。

麻布の上に直接油絵具を乗せるわけにはいきませんので、下地塗りには

膠(ゼラチン)と鉛白(シルバーホワイト)を混ぜたものが塗布されるようになりました。

*膠は動物の骨と皮の間にあるゼラチン質のことをいいます。

油絵で使われる膠はウサギの膠が使われるようです。日本画では、顔料を膠で溶いて画面に絵の具を接着させて描きます。

膠は乾燥した状態で販売されているので、膠1:水10の割合で一晩ふやかしておいて、それを湯煎で温めて溶かします。

湯煎の温度は大体50℃くらいで温めて溶かします。

ヴェネツィア派では、

下地の色は赤褐色に塗られて、その上に絵が描かれていったのです。

明るい白の部分は、「シルバーホワイト」という絵の具を使って、あとから白くしていくといった描き方をしていました。

フランドル技法のあらかじめ、白い部分は塗らずに、地塗りの白を活かした描き方とは

反対の描き方をしていたのですね。

【リアルな油絵の変遷】ルーベンス技法

17世紀になると、ルーベンスがベネツィア派の技法で描かれた絵は、時間の経過とともに白い絵の具が透けてしまい

下地に塗った赤褐色の色が見えてきてしまうこと

全体的に色調が黒ずんで暗くなることを知ります。

そこで

ルーベンスは下地の色を薄いグレー、もしくは黄色で塗ることを考え出します。

変色するからと言って、フランドル技法のような描き方には戻さなかったのですね。

どうしてかというと

フランドル技法は制作時間がかかったからなんです。

時間の節約のために、

明るい黄色の下地の上に、茶色のデッサンをすることで描き進める方法をとったのです。


この方法は短い日数でたくさんの枚数の絵を描くことができる方法です。

この方法を使って、板とキャンバスの両方に描きました。


ベラスケスやレンブラントは、あらかじめ画面が暗くなることが分かっていたので、明るい色調で描き、現在残っている作品は、暗くはなっていません。

印象派のアラプリマ技法はまた、違ったリアルさを油絵に求めた

モネの作品積みわら(雪の効果・朝)
「積みわら(雪の効果・朝)」
モネ
1891

19世紀の印象派たちの描き方は今までの、下地に茶色のデッサンを描いてから、色を何層も重ねて塗っていく方法から、

白い地塗りをしたキャンバスに、直接色の絵の具で描く方法に変化していきました。

こういった描き方を

「アラプリマ技法」

といって、イタリア語で「第一番目に」という意味だそうです。

一層の絵の具の層で仕上げるので、一層描きとも言います。

 

筆のタッチや、絵の具の盛り上げを画面の効果として生かした描き方です。

この描き方が一般化したのは、19世紀後半からで、絵筆も柔らかいものから固い豚毛が使用されるようになりました。

私たちが今使っている絵の具と豚毛の筆はこのころからできたんですね。

なので

17世紀以前に描かれたリアルで写実的な絵を描こうと思ったら、

筆や描き方を変えなくてはいけないのです。

まとめ

油絵が日本に紹介されてから歴史は浅いのです。

ちょうど、油絵が日本に紹介された時期は、ヨーロッパでは印象派が主流を占めていたので、油絵を言ったら、印象派のような描き方の絵になったのでしょうか。

だけど

油絵って、本当はどんな風にも描くことができるすごい絵の具なんです。

私の絵を見た方々は、これは何を使って描いているんですか?と質問されたりします。

それから

油絵ってこんな風にも描けるんだ!・・・と今までのイメージと違う油絵を見て驚くみたいです。

リアルで写実的な油絵を描くには

昔の巨匠と呼ばれる画家たちの描き方を学ぶ必要があるんだということをお伝えしたかったのですが、いかがでしたか。

私も、まだまだこれから過去の巨匠といわれる画家たちの描き方を学んでいきたいなと思っています。

ぜひ、あなたも油絵に挑戦してみてはいかがでしょうか?

 

 

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